分散分析(二要因以上)

手法の概要

  一要因分散分析 と同様,実験や調査などによって得られた平均値データに,有意な差が見られるかどうかを検定するための手法です。ただし,データに影響する要因が1つだけではなく,2つ(以上)あるときに使用します。
 たとえば,実験参加者にクイズを解かせて,その得点を比較する実験を行ったとします。このとき,「クイズの難易度(難しい・易しい)と制限時間(長い・短い)によって,得点は異なるか」という問題を調べたい場合に,二要因分散分析を用いることができます(Figure 1)。
 二要因以上の分散分析で重要なポイントは,一要因の分散分析とは異なり,交互作用を検討することができる,という点にあります。交互作用とは,2つ以上の要因の組み合わせによる影響のことです。
 クイズ実験の例で交互作用について考えてみましょう。ここでは,クイズの難易度が易しい場合(グラフの右側を見てください),制限時間の長短によって得点に差が見られません。これに対して,クイズが難しい場合(グラフの左側を見てください),制限時間の長短によって得点に差が見られます。これらの状態が,交互作用にあたります。つまり,制限時間の影響はクイズの難易度との組み合わせを考慮する必要がある,ということです。1このように,交互作用を検討することで,一方の要因を分析しただけではわからなかった事実を発見することができます。

Figure 1. 各条件におけるクイズの平均得点(エラーバーは標準誤差)

分析するときの条件

論文(レポート)における報告例

  • クイズの難易度要因の主効果は有意であった (F(1, 35) = 9.21, MSE = 1212.50, p = .005)
  • クイズの難易度要因と制限時間要因の交互作用が有意であった (F(1, 35) = 4.31, MSE = 1445.60, p = .045)
  • 交互作用が有意であったため単純主効果の分析を行ったところ,制限時間要因の主効果は,クイズが難しい場合には有意であったが(F(1, 35) = 13.69, MSE = 1244.81, p < .001),易しい場合には有意でなかった(F < 1)。

参考になる書籍・サイト

より深く知りたい人は


  1. 「クイズが難しいときの制限時間の影響」のように,一方の条件を固定したときの(ここではクイズの難易度を「難」に固定したときの),他方の要因(ここでは制限時間)による影響のことを「単純主効果」と呼びます。 ↩︎

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吉原将大 (Masahiro Yoshihara)
日本学術振興会特別研究員PD (JSPS ​Postdoctoral Fellow PD)

ヒトが言語を認識したり,話したりする能力の背後に,どのようなメカニズムが潜んでいるのか研究しています (My research interests include the mechanisms underlying word recognition and speech production of human beings.)

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関連項目