因子分析

概要

 例えば、ある学校で生徒に実施した期末試験(国、社、数、理、英)の点数に、国・社・英と数・理のまとまりが出来たならば、文系科目因子と理系科目因子がある、と解釈できます。このように、ある調査によって得られた複数の変数の中で、変数A(例えば国)と相関が強い変数B・C(社と英)があれば、弱い変数D・E(数と理)もあるといった相関関係を手掛かりに、指標のグループ分けをすると、そこには何かしら共通した解釈ができる可能性があります。因子分析は、そうした複数データ間に対応するような関係をまとめた“因子”として見せてくれる分析手法です。分析者は、その因子を確認することで、そのまとまりができるということは何か説明付けができるのではないか?と解釈を加えます。調査で得たデータは、単純な2因子構造であるとは限らず、複雑な構造をもっていることも多いです。その複雑な構造の中から相関が強いデータ群としてまとめていき、そのまとまりに何かしらの解釈ができるか確認するのが因子分析になります。人の心理構造を把握する心理測定尺度の作成時やSD法質問紙の結果から人の感性を判断する時に、よく因子分析は用いられます。

分析する時の条件

  • 用いる変数は量的変数(比例尺度や間隔尺度)でなければならない。順序尺度の場合は、カテゴリカル因子分析を行う。ただし、心理測定尺度など、段階評定式の回答を間隔尺度として扱い、因子分析を用いる場合がある。
  • 基本的に調査項目数(設問数など)の4~10倍の被験者数が必要となる。
  • 分析の前に、このデータにはいくつの因子があるか、想定する因子数は分析者が決めなければならない。因子数を決定する方法は、固有値の推移から判断する方法やSMC平行分析とMAP分析を組み合わせた結果を参照し判断する方法がある。
  • 因子分析を実行する際、因子抽出をする方法と回転法を指定する必要がある。
  • 因子抽出法は最尤法・最小二乗法・主因子法の3つから選択する事が多い。サンプル数が十分に多いならば最尤法、サンプル数に不安がある場合や不適解が生じる場合は最小二乗法→主因子法という順で決めていく。
  • 回転法は直行(バリマックス)回転と斜交(プロマックス)回転から基本的に選ぶことになる。抽出されるだろう因子同士が無相関に近い形で抽出する場合は直行回転、因子同士に弱い相関を想定するならば斜交回転を指定する。
  • 因子分析の結果で示される各項目の共通性が0.16以上、因子負荷量が0.4以上あれば、その因子を構成する項目だと(一般的には)判断できる。基準を下回る、複数の因子に高い負荷量を示す項目は削除することを検討する必要がある。
  • 抽出された因子が信頼できるか、妥当かどうかを確認する必要がある。クロンバックのα係数によって確認される場合が多い。ただし、研究設計上望ましい方法を選択するよう検討することは忘れてはならない。

論文(レポート)における記載例

 学習意欲を測定する尺度30項目に対する生徒の回答結果を用いて探索的因子分析(主因子法, プロマックス回転)を行った。MAP分析とSMC平行分析による適切な因子数の検討および抽出された因子の解釈可能性から8因子が適切な因子数と判断した。抽出された8因子の各項目から、因子の解釈を行うと、第1因子は~ (各因子がどのような解釈なのかを記述していく)

参考になる書籍・サイト

より深く知りたい人は

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大塚啓太(Keita Otsuka)
研究員 (Researcher), 客員研究員 (Visiting researcher)

My research interests include distributed robotics, mobile computing and programmable matter.

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関連項目