学生が戸惑いがちな研究計画の立案

大学や大学院で研究活動をはじめてスタートする人ばかりでしょう。

研究を進めようとするならば、研究計画を立て、調査や実験を行い、得られた結果を分析し、考察したことを成果発表(発表や論文執筆)することになります。

しかし、はじめて研究しようとする人にとっては、「どうやって計画を立てれば良いの?」、「どうすればイメージするデータが取れる?」、「分析する為の方法がわからない…」と頭を抱えることが多いでしょう。

博士課程在籍当時や博士研究員現在も、大学生や院生から(時には大学教員からも)そうした相談を受けます。

今回は、私たちが行った実験を例にしながら、研究計画を立てる為の考え方がイメージできるような紹介をしていきます。(計画以外の話はまた改めて。)

研究計画を立てる

そもそも何をやれば良いだろう?と考える人は多いのではないでしょうか。研究へのモチベーションは人それぞれ、最初から何をしたいかはっきりしている人は少ないのかもしれません。私たちの場合、2つのことを考えていました。

1)生活している中で、これがわかったら良い(おもしろい、役に立つ等々)と思える仮説は?

研究をしようとする人が一度は考えなければならないことでしょう。自分だけでなく、誰かの役に立つからこそ、研究する価値があり、その成果を発信する意味が出てきます。

私たちの場合、「コミュニケーションロボットが店頭に並ぶことが多くなったよね」という話題がきっかけだったかなと思います(詳しくは忘れました…)。接客とかに活用されるコミュニケーションロボットですが、ヒトにあって、ロボットにある良いところは何だろう?となったわけです。

そこから、「コミュニケーションロボットの方がヒトより話易い・接しやすいんだったら、もっとロボットに任せられる仕事があるかも」という仮説になったのです。

研究としての表現にすると、↓資料の「目的」のようになります。 https://www.micenavi.jp/jpa2019/img/figure/10523.pdf

2)それぞれの専門を持ち寄ってできることは何か?

私たちがチームで動こうとしていたからこそ考えたかったことですが、研究しようとする人たちにとっても、自分は何が得意かを考えてみることは役に立つでしょう。

私の専門は、心理測定尺度を用いて、とある集団(例えば、学校の1クラスや1学年)の心理傾向・状態を診断することです。一方で、一人一人と向き合って、その人個人の行動がどんな意味をもつかを突き詰めるのは苦手です。

他のメンバーの専門は、心理実験の整備、行動指標の分析や人の認知を検証することに長けていました。また、新しい技術に関心を持ち、コミュニケーションロボットを運用することも可能でした。補い合えたからこそ、立てることができた研究計画だったと思います。

研究計画を立てる時は、何をしたいか、と同時に、何ができるかを考えることも必要になるでしょう。質問紙を利用した集団分析が得意か、インタビュー調査で一人を突き詰めるのが得意か、行動をデータ化して比較するのが得意か…、自分の得意を上手く研究計画に落とし込むことが大事です。

研究計画は大学教員でも意外と大変

上記のことは、基礎中の基礎なのですが、経験が長くなると忘れていったり、タスクに合致した計画を立てなければならなくなったりで、博士課程を終えた私たちはもちろん、大学教員であっても苦労するようです。また、外部の大学院生から相談を受けている中で、当然のこと過ぎて指導教官が教えておらず、わからないまま研究を進めてしまっている学生もいました。

いずれはそうした経験を基にしたエピソードを例として交えながら、研究活動のあれこれを紹介していこうと思います。

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大塚啓太(Keita Otsuka)
研究員 (Researcher), 客員研究員 (Visiting researcher)

My research interests include distributed robotics, mobile computing and programmable matter.

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